日本は二重国籍を認めていない一方、カナダは多重国籍を認めています。したがって、法令上はカナダ国籍を取得した時点で日本国籍を放棄する必要があり、日本国籍は自動的に喪失するとされています。とはいえ、実務上は戸籍や旅券などの書類上ではすぐに変更が生じるわけではなく、国籍喪失の届出をしない限り形式的に二重国籍の状態が保たれます。このため、多くのカナダ在住の日本人が日本国籍とカナダ国籍の両方を保持しているのが現状です。
一部では「二重国籍のままカナダ在住で日本に帰国する場合は、カナダのパスポートのみを使用するのが安全」と言われることがあります。これは、カナダ国籍を取得した時点で日本国籍は法的に喪失し、喪失後の日本パスポートの使用は違法とされるという規定があるためです。とはいえ、実務上は両方のパスポートを保持し、状況に応じて使い分けるのが最も便利で、より確実です。
使い分けの具体例
- カナダ出国時: 航空会社のチェックインでは日本のパスポートを提示(航空会社は渡航先に入国できるかを重視するため)
※カナダの出国審査はない - 日本入国時: 入国審査では日本のパスポートを提示(入国がスムーズ)
- 日本出国時: 航空会社のチェックインではカナダのパスポートを提示(カナダに入国可能であることを示すため)、出国審査では日本のパスポートを提示(出国がスムーズ)
※カナダのパスポートを提示すればeTAの申請は不要 - カナダ入国時: カナダのパスポートを提示(入国がスムーズ)
使い分けは一見複雑に見えますが、理由を理解すれば自然に納得できます。仮に間違って提示してしまっても二重国籍自体が問題視されることは基本的にありません。なぜなら、航空会社や入国審査官は「その人がその国に入国できるか」しか確認しておらず、二重国籍かどうかを判断する権限はないからです。
もし使い分けが面倒に感じる場合は、カナダをメインに在住して日本へ一時帰国する際はカナダのパスポートのみ、日本をメインに在住している場合は日本のパスポートのみを利用するといった方法でも大きな問題はありません。